ピロリ菌・除菌治療
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)と除菌治療について
ピロリ菌について
ピロリ菌は胃の粘膜に生息しているらせんの形をした細菌です。胃には胃酸があるため、通常の菌は生息できませんが、ピロリ菌はウレアーゼという酵素を持ち、この酵素のため、ピロリ菌の周囲をアルカリ性の環境にでき、胃酸を中和することにより胃の粘膜表面や粘液中に生息できるのです。
ピロリ菌に感染すると胃に炎症を生じ、長い期間炎症が続くと、胃粘膜の胃酸などを分泌する組織が消失した「萎縮性胃炎」を生じます。また、ピロリ菌が胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因となることがわかっています。
そして胃がんとピロリ菌は密接に関連しており、ピロリ菌を除菌することにより、新たに胃がんは発生する確率を減らすことができると考えられています。
ピロリ菌の除菌治療について
ピロリ菌の除菌治療とは、胃酸の分泌を抑える薬を1種類、抗菌薬を2種類、計3種類の薬を朝・晩で2回、7日間継続して内服する治療方法です。
まず初回の除菌治療を「一次除菌療法」と呼び、以下の薬を内服します。
<一次除菌療法>
- PPI(プロトンポンプ阻害剤)+クラリスロマイシン+アモキシシリン
- 内服期間 7日間
一次除菌療法で除菌が不成功となった場合(ピロリ菌が消えなかった場合)、次に行う治療を「二次除菌療法」と呼び、以下の薬を内服します。
<二次除菌療法>
- PPI(プロトンポンプ阻害剤+メトロニダゾール+アモキシシリン
- 内服期間 7日間
一次除菌の成功率は75%~90%と報告されており、薬剤によって除菌成功率に違いがあることがわかっています。当院では除菌の成功率が最も高いPPI(プロトンポンプ阻害剤)であるボノプラザン(商品名;タケキャブ)を主に使用しています。ボノプラザンによる除菌率は、一次除菌で92.6%、二次除菌までで99.8%と報告されています。
ペニシリンアレルギーがある方、二次除菌が不成功だった場合の三次除菌療法(自費)についても対応しておりますので、診察の際にご相談ください。
除菌治療の副作用
除菌による副作用については、以下のようなものが報告されています。
- 軟便、下痢
- 味覚異常・舌炎・口内炎
- 皮疹
他、肝機能障害、腹痛、頭痛など
治療の中止となるような強い副作用は多くありませんが、副作用と思われる症状が強く表れた場合には、内服治療を継続せず、当院にご連絡ください。軽い症状の場合は、治療終了すれば副作用も改善することがほとんどのため、可能な限り内服を継続することをお勧めします。
除菌後の判定
除菌後にピロリ菌が消えたかどうかの判定は除菌治療終了後、最低でも1か月以上経過してから、尿素呼気テスト、または便中ピロリ抗原測定を行います。
尿素呼気テスト
ピロリ菌が分泌するウレアーゼの働きで作られる二酸化炭素の量を調べる検査です。
検査用の薬を飲み、一定時間経過した後、吐き出した息(呼気)中の二酸化炭素(CO2)
の量を調べます。
便中ピロリ抗原測定
便を採取してピロリ菌抗原があるかどうかを調べます。
除菌後の定期的な内視鏡検査
除菌治療が成功し、ピロリ菌が陰性になった後も、胃がんを発生するリスクが0になるわけではありません。そのため、除菌後も上部内視鏡検査を定期的に行うことが重要です。
当院では口から(経口)、鼻から(経鼻)、どちらからの検査でも対応しております。今まで検査が苦しかった方については、鎮静剤を使用し、眠ったような状態での内視鏡検査も行っておりますので、お気軽にご相談ください。